自社ECサイト制作前に知っておきたい事業規模に合わせたシステム選定方法

EC市場が拡大を続けている今、「新規事業としてECビジネスを立ち上げることになったが、何から始めたらいいの?」という相談が増えています。失敗しないECビジネスを実現するには、事前準備が不可欠です。まず基礎知識として、事業の核となる自社ECサイトの制作方法を把握しましょう。
制作方法は以下の6種類が代表的です。
・無料ASP
・有料ASP
・オープンソース
・ECパッケージ
・クラウドEC
・スクラッチ

このように、多くの選択肢がある中から制作方法を選ぶ時は、見込みとなる年商規模が1つの目安となります。そこで今回は、それぞれの制作方法の特徴と、その費用をご紹介していきたいと思います。

個人で始めるなら無料ASP

ASPは、Application Service Providerの略で、PCにソフトウェアをインストールすることなく、インターネット環境があれば簡単にECサイトを制作することができます。無料版と有料版があり、BASEやSTORESが代表的な無料ASPです。

メリットは、初期費用がかからず、簡単な操作で制作できること。月額利用料も無料ですが、商品が売れた際に3~5%の手数料が発生します。

デメリットは、デザインや機能が限られていたり、自社ドメインが使えないなど自由度が少ない点です。また、将来的にサイトを大きくしていこうと考えている場合は、あまりおすすめできません。より機能が充実している有料ASPやその他のECシステムに移行する場合、無料ASPで使用していたドメインが引き継げないからです。

そのため、無料ASPは、個人の小規模ビジネスに適していると言えるでしょう。

EC年商1億円以下の小~中規模は有料ASP

有料ASPの特徴は、初期費用が数千円~数十万円と低コストなことです。あらかじめ商品ページのテンプレートやカートの設定が用意されており、開発にかかる工数は少なくすみます。

WEBサイトのシステムは、利便性やセキュリティー向上のため定期的なメンテナンスが必要となりますが、ASPの場合はプロバイダーがシステム管理をしてくれるので、最新の状態を保つことができます。

またITリテラシーが低くとも、ASPに蓄積されたマーケティングノウハウを利用して売上を伸ばして行くことができます。

注意したいポイントは、レスポンシブに対応していなかったり、カートステップは固定化されるなどデザインや機能に制限があることです。必要要件を明らかにし、将来性を見据えてベンダー選びをすることが重要です。「規模拡大により、システムの乗り換えを迫られ、結局高くついた」とならないようにしましょう。

また、コストの安さだけでASPベンダーを選ばないことです。ベンダーにより得意と不得意があります。例えば、海外に向けて販売する越境ECに対応できるかや、BtoBに向いているかなどです。各社が公開している事例を参考にし比較しましょう。

EC年商1~5億規模ならオープンソース

オープンソースとは、ソースコードが公開されており、無償で使用できるソフトウェアを指します。EC‐CUBEやMagentoは、代表的なECサイト構築のためのオープンソースです。低予算で独自のECシステムを構築したい時に有効です。また、カスタマイズが自由にできるため、よりオリジナリティのあるサイトが可能です。

しかしながら、ITの専門的な知識がないと使いこなせません。また、プログラムコードやマニュアルが多数公開されているので、開発にとっては開発しやすいものの、サイト改ざんやハッキングによる個人情報流出の被害に合いやすいリスクがあります。

そのため、十分なセキュリティー対策が必要となります。また何かトラブルが起きた場合は、サポートが受けられず、自社の責任となります。自社内にシステム開発部門または、高いスキルを持った人材がいないと、オープンソースでのECサイト制作は難しいと言えます。

EC年商規模が1億円以上ならパッケージ

年商規模が1億円以上見込まれる大規模サイトであれば、ECパッケージまたはクラウドECを選びましょう。この規模の場合、1日あたりの売上が数百万円、注文は100件以上入ることが考えられます。
そうなると在庫管理や出荷作業など、バックエンド業務が膨大になり、ミスも発生しやすくなります。それを防ぐためにも、物流や在庫や受注のデータをシステム連携する必要があります。また、すでに実店舗を持っているなら顧客データや基幹システムなどと連携して実店舗とECサイトを一元管理する必要もでてきます。

これらの連携はASPでは実現ができないため、ECパッケージやクラウドECを採用しましょう。初期費用は、数百万~数千万円します。また、ランニングコストもASPより高くなります。

パッケージECとクラウドECの違いは、管理する場所です。パッケージECは自社サーバーにインストールして使いますが、クラウドECはベンダー側のクラウドサーバー上で管理します。
そのため、システムはすぐに古くなってしまうのです。

ECパッケージの場合は、数年ごとにシステム改修が必要で、費用を確保しておく必要があります。一方、クラウドECはベンダー側が常に最新の状態にアップデートしてくれるので、改修費用がかかりません。

各ベンダーは、ASPベンダーと同様にそれぞれ特徴や費用が異なるので、複数社を招いてコンペをすることをおすすめします。

EC年商50億円以上ならフルスクラッチ

パッケージ、オープンソース、ASPなど既存のシステムを使わず、一からECサイトを構築する方法です。カスタマイズ性が一番高く、企業独自の機能を持ったECサイトを作り上げることができます。
ZOZOTOWNやユニクロのECサイトがその代表例です。開発から運用まで内製化できるため、コンバージョンを上げるための改善が素早くできることがメリットです。しかし、初期費用は3,000万円以上。開発期間も長期になります。また社内に非常に開発スキルの高い人材を持つ必要があります。

まとめ

今回は、ECサイト制作方法をご説明しました。見込まれる年商規模が、制作方法を選ぶ一つの基準となります。しかしながら、ECパッケージを一つとっても、各社それぞれの機能、得意分野など異なります。まずは、自社ECサイトを将来どのようにしたいかを明確にし、その必要要件を満たすかどうかを確認しましょう。