ECサイトのリニューアル ①準備編

ECサイトのリニューアルを検討するきっかけは、「売上をより拡大する必要がある」「担当者が変わった」「上司に言われた」といった背景が思い浮かびます。そして、リニューアルと聞くと、実際に手を動かすデザイン、コーディングといった業務を思い浮かべるでしょう。

これまで多くのサイトに携わってきた中で、せっかくリニューアルしても思った成果が得られない、良くなったのかどうか判断できないといった声を聞きます。サイトリニューアルを成功に導くには、正しい手順を踏み、関係者の共通理解を得る必要があるのです。

ECサイトのリニューアルを成功に導くステップを8回に渡って紹介します。今回は、1回目の準備編です。

《ECサイトリニューアルのステップ》
①準備
コンセプト
サイト構造
コンテンツ
デザイン
システム
依頼先
評価と改善

背景と目的を明確にする

リニューアルをするからには、相応の理由や顕在化した問題点があるはずです。ECサイトをリニューアルする理由の多くは「売上を上げたいため」のケースが大半を占めます。

このとき、売上と言っても関係者の間では認識の相違が起きがちです。

「商品Aは利益率が高いので、もっと売上を伸ばしたい」
「商品Bは薄利だが集客に繋がっているので、より強化したい」
「これまでとは異なる顧客層を獲得したい」

上記のように、メンバー間で異なる見解を持っていたりします。また、売上を上げたいといっても、昨対150%なのか、300%なのかによってもリニューアルにかかる工数やその後のプロモーションが変わってきます。

リニューアルの出発点である背景、目的を関係者間で認識を共有し、数値目標も加えられると、プロジェクトを円滑に進めていくことができるのです。

背景や目的が欠けているときに起こること

背景が欠けている場合

背景はいわばリニューアルを行うきっかけ(原因)と言い換えられます。もし背景がなければ、これまでの実績を頼りにリニューアルを進めることになるので、既存顧客の売上アップを目指したサイトづくりになります。

背景があったとしても十分でなければ、新たな顧客に目がいってしまい、既存顧客が使いにくくなるかもしれません。

目的が欠けている場合

売上アップに向けてサイトを刷新するにしても、目的が設定されていないと、感覚だけで進行することになります。担当者、デザイナーの好きなデザインや構成で、売上に結びつけば幸いですが、裏付けのない進め方はある種の賭けです。

目的が不十分な場合も、何となくデザインは気に入ってもらえたが、成果の上がらないサイトになってしまいます。

KPIと使える予算を明確にする

ビジネスの現場でKPIを使う機会は多くなってきましたが、それを意識してPDCAを回している現場はまだまだ少ないと感じます。ECサイトにおけるKPIは概ね以下の2つに大別されます。

①総合通販の場合:集客数×購買率×客単価
②定期通販の場合:顧客数×LTV

売上を上げたいとき、指標のどの数字をどのように上げていくのか検討します。集客数を伸ばしたいのであれば、SEOに強い構造にする方法や、追客の仕組みを導入したり、広告に予算を使うことも考えられます。

購買率や客単価を上げたいのであれば、ラインアップの強化や価格の見直しも必要かもしれません。LTVを高めたいのであれば、ステップメールや同梱物など、サイトのリニューアルとは別のところに課題があると考えられます。

成長率は、集客数・購買率・客単価の掛け合わせです。

【150%成長を目標とする場合】
集客数:120%アップ
購買率:120%アップ
客単価:105%アップ

成長率=120%×120%×105%=151% となります。

※集客数に広告を含める場合は、リニューアルだけの指標ではなくなります。

何をどれだけ伸ばすのか、それを実現するのにどの程度のコストをかけられるのか、準備の初期段階で明示しておく必要があります。

KPIを導き出すデータ解析

ECサイトの多くがデータ分析ツールであるGoogle Analyticsを導入しているでしょう。この分析ツールを使って、現状のサイトでは何がうまくいっていて、何が問題なのかを定量的に把握します。

もし社内にデータを解析できる担当者がいないのであれば、専門の会社やデータ解析も可能な制作会社と一緒に進めましょう。

データ解析の基本は「比較する」ことです。ECサイトのリニューアルに当たっては、以下のようなポイントを確認しましょう。

1. 流入元別の購入数

サイトに訪問したユーザの検索、広告、直接、SNS、メールなどの流入元別に、どれだけ売上に貢献しているのか確認します。

2. ランディングページ別アクション

ランディングページとは、ユーザが最初に訪問したページのことで、このページから購入したのか、次はどのページを見たのか、何もしなかったのかなどを確認します。

3. カート離脱率

商品をカートに入れてから購入を完了するまで、どのステップで離脱しているのか確認します。特に名入れギフトや定期購入、店頭受け取りといった購入方法は複雑になりがちで、カートに入れたのに買ってくれない理由の推察に役立ちます。

4.ページの価値

「ページの価値」とは、対象ページまたはページセットの平均値です。

計算式は、
(トランザクション収益 + 合計目標値)÷(ページまたはページ セットの合計ページ表示数)

端的にいうと、そのページがサイトの売上にどれだけ貢献したのかの指標です。これらの情報は一元的に見ると誤った判断をしてしまうので、外れ値の除外をした上で影響力の高いページを対象に見ていくといいでしょう。

商品やサービスの棚卸

準備段階の最後は、商品やサービスの棚卸を行います。(ここでは意思決定ではなく、検討する情報収集です)

上述のデータ解析で導き出された「要改善対象」ページと売上の実績から、商品・サービスをこれからも必要なものと、そうでないものに振り分けます。

商品やサービスは、それを開発したり、仕入れたりした担当者の思い入れも強いため、配慮しながら進めていくことになります。ここでピックアップされた商品・サービスは後述するペルソナと合わせて検討を進めますが、準備段階では以下のような視点で情報を集めると良いでしょう。

まとめ

準備だけでも大変な印象を持たれたかもしれませんが、リニューアルを成功に導くためには、基礎固めをしておくことが重要です。

次回は、コンセプト設計の中でどのようなお客さまと付き合っていきたいのか、そのお客さまにはどのような伝え方をしていくのかを説明します。

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