ECサイトのリニューアルを成功に導くステップを8回に渡って紹介する今回は、6回目のシステム編です。
《ECサイトリニューアルのステップ》
①準備
②コンセプト
③サイト構造
④コンテンツ
⑤デザイン
⑥システム
⑦依頼先
⑧評価と改善
デザインが出来上がると、ECサイトの構築の段階に入ります。ECサイトの構築にはカートシステムを始め、受注や在庫管理を円滑に進める仕組み、ECカートを補完するリコメンドエンジンや分析ツールの導入なども検討していきます。
システムの選定には、自社に必要な機能の洗い出しと費用面で折り合いをつける必要があります。まずはメインとなるカートシステムについて説明します。
Contents
販売形態による違い
ECシステムは、単品通販型か総合通販型かで要件が大きく異なります。単品通販の場合、リピートを促すようなステップメールの配信やLP上に注文・申込ができるフォームが必要になります。総合通販の場合、大量の商品をまとめて登録するような仕組みや、商品と商品を結ぶレコメンドエンジンが必要になってきます。
単品通販の場合
単品通販では定期購入が前提の仕組みとなり、2回目以降の発送タイミングで注文データが再度上がってきて在庫の引き当てをしたり、クレジット情報の引き当てが必要になってきます。
単品通販型のカートに求められる機能としては、リピートを促す仕組みがあるのかどうか、単一LPに対してカートを設置することができるのか、そして商品のリニューアル時あるいは顧客リストのインポート時にクレジット情報を引き継げる仕組みかを確認します。
総合通販の場合
総合通販のシステムに関しては、自社で構築した商品データベースとリアルタイム通信をしたり、そのデータベースとAPI連携をして、自動でサイト更新することが求められてきます。販促企画を行う場合には、季節に合わせた商品のピックアップをしたり、お客様に合わせた商品リストを作り、そのページをメールマガジンやWeb広告で展開することが多くなります。
ページを作るに当たって、1つずつページを作成すると多くの時間が必要になるため、例えば商品番号だけでリストページが作成できたり、各商品タグ情報で対象商品のリストが表示される仕組みがあると便利です。
商品リストはウィンドウショッピング形式やリスト形式といった、複数の形式を持たせたり、価格順やレビュー順、お勧め順、新しい登録順といった形でソートするような機能が欲しいところ。
こういった大量の商品があるお店に関しては、いかにお客様の求める商品にスムーズに導線を設計できていくのかというところが売上に関わってきます。そのため、商品を探しやすくするサイト内検索機能も実装します。
サイト内検索はお客様のニーズの宝庫で、サイト内でどのようなワードで検索され、その結果、ページの検索結果から離脱している状況や経路を分析することでお客様のニーズに合わせた商品をピックアップしたり、あるいはニーズの高い商品を新たにMDすることも考えられます。大量の商品、データを効率よく管理できるかがポイントです。
多店舗展開の場合
2010年頃より、自社ECに加えて、楽天市場やYahoo!ショッピング、Amazonといった複数の店舗を運用する多店舗展開が一般的になってきました。これらの4店舗の商品ページを、随時更新したり新規登録していく事は非常に大変です。
そのため、こういった多店舗展開する場合には、自社でデータベース開発をするかあるいは複数の店舗に同時に出品更新ができるようなサービスの導入を検討いただくことになります。 複数店舗を同時運用する仕組みにはクロスモールが代表的なサービスでしょう。クロスモールではECモールに加えて自社ECも合わせて運用ができる仕組みを提供しています。
多店舗展開を行うツールの注意事項としては、あらゆるページがそのシステムの機能に依存する点です。当然のことながらシステムの提供している機能内でのページ作成・更新になりますので、自社でやりたい機能が網羅されているとは限りません。これからECサイトを構築、多店舗展開するといったような場合は、まずはクロスモールといったサービスで運用し、その中でどうしても不足しているような機能が出てきた場合には、自社開発のステップを踏むのが良いでしょう。
他社のサービスを使うことで、もともと想定してなかった機能に触れますし、管理画面を見ることでどのようなインターフェースを構築すると運用が楽になるかといったようなのかも得ることができます。自社データベース開発における1番のメリットは、なんといってもカスタマイズ性です。
例えば自社とECモールでは売り方・見せ方を変えようと言った場合にそれぞれの店舗用のテンプレートを作成して、例えば自社は高級感をだし、楽天は賑わい感を出すといったようなことも可能になってきます。
また、自社のデータベースであれば入力したデータを取り出すことができますので、例えば分析を行うにあたって、カテゴリ別の売上傾向や価格帯別の売上分析をするといったことも容易に行うことができます。数万点以上の商品を扱うショップには、ぜひ導入を検討していきたいシステムと言えるでしょう。
カートシステムの選定
ECカートには、以下の3種類の構築方法があります。
1.フルスクラッチ
最も高度で費用、開発工数もかかりますが、思い通りの構想に合わせたシステム構築ができます。ECサイトの全ての機能を要件定義から実装まで行うため、過去の販売経験を活かせ、開発コストも潤沢にある場合に選択候補にあがります。
開発の難易度が高いのはもちろん、顧客に合わせた環境対応やセキュリティレベルの担保、現場メンバーが使いやすいバックエンド機能など、細部まで設計していきます。少なくとも1年以上の開発期間と3,000万以上の開発コストを用意いただける場合に検討いただきます。
2.オープンソース
フルスクラッチに対し、ベースとなる開発コードが公開されているものを利用して、開発工数を少なくする方法です。中規模のECサイトではオープンソースを利用することも多く、EC Cubeが最も知名度、利用率ともに高いといえます。
工数を要する基礎コードを無料で利用できるため、フルスクラッチに比べて開発工数をおさえ、決済方法やデザインを簡単に構築できるプラグインも豊富に用意されています。機能追加をしていくのは比較的容易ではありますが、セキュリティの脆弱性をついた攻撃を受ける機会も多く、常にファームウェアのアップデートを始めとしたセキュリティ強化が必須です。
3.ASP
楽天市場やYahoo!ショッピングといったECモールと似た方法で自社ECサイトを構築できるのがASPです。商品を登録してユーザに閲覧いただくフロント機能から、受注・顧客対応するバックエンドまで提供されています。コストはロイヤルティのかからないECモールといったところで、初期コストが最も低くおさえられるので初めてECサイトを立ち上げる店舗から月商3,000万程度までカバーできます。
デメリットはASP側で提供するシステムに依存するため、独自性を出したり、基幹システムと接続してリアルタイム更新することができない点です。特にカート遷移は固定されるため、カート内のステップ数や順番、カート内オファー、決済方法やマイページのカスタマイズはできず、ブランディングは難しい側面があります。
カートシステムの相談を受けた場合の返答は、まずはASPで始め、自社の顧客やブランドに合った見せ方や機能が固まったら独自システムに切り替えることを推奨しています。もちろん当初から独自性を追求することはできますが、何も知見がない中で構築していくよりは、世の中にある仕組みで経験を積んでから設計した方が結果的に近道になると確信しているからです。
ASPカートも乱立していますので、クライアントのニーズに合わせて選定、提案していくことになります。機能、使い勝手からセキュリティ要件までシステムを選定、運用するのは経験がものをいうので、専門家の知見を借りるのが良いでしょう。
まとめ
ECサイトの構築にはシステム、デザイン、コーディング、それに加えて受注を含めてオペレーションを容易にすることが必要になってくるためかなりのコストもかかってくることになります。
初めてECサイトを運営するにあたって、顧客リストを有していない場合は広告で集客をすることになります。その場合は広告コストも費用として計上することになってきますので、損益分岐点が遠のくことになります。
もし試験的にECサイトを立ち上げたいと言うことであれば、BASEなど無料ショッピングサイトもありますので、まずは無料でできるサービスを使って感触をつかむのも良いでしょう。
ご注文いただければ、顧客対応や商品の出荷、お客様のフォローといった業務もこなすことになりますので一連のECの経験を積むことができます。そういった経験がシステム導入の恩恵を感じられたり、どういったシステムにするとオペレーションをスムーズに運ぶのかといった構想につながっていきます。
次の章では、システムを構築しECサイトが出来上がった後の、構築への依頼先について紹介します。